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生物学的製剤や生物薬品と呼ばれるバイオ医薬品は、遺伝子組み換え、細胞融合、細胞培養などのバイオテクノロジーを用いて製造された医薬品で、細胞、酵母、細菌などの生物が産生するタンパク質をもとに作られます。バイオ医薬品はがんや糖尿病をはじめ、様々な疾患の治療に用いられており、ワクチン、インスリン、ヒアルロン酸、インターフェロンなどのサイトカイン、抗体製剤などがあります。バイオ医薬品は有効性と安全性に優れていることが特徴で、近年急速に普及してきています。しかし、バイオ医薬品は高額であり患者さん個人に経済的負担がかかることから、手が届かない患者さんもいます。また医療費高騰の原因となり、社会問題にもなってきています。
バイオシミラー(バイオ後続品)とは、「特許期間が終了した先行バイオ医薬品の後続品」のことで、特許満了後に発売されます。特許が切れた後に発売され、値段が安い点では、ジェネリック医薬品(後発医薬品)と共通しており、ともに患者さんの経済的な負担を大幅に減らすことができますが、大きく異なる点があります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分自体は全く同じ成分が使われますが、バイオシミラーは先行バイオ医薬品と同等/同質という共通のコンセプトに基づき製造されているものの、有効成分は全く同じではなく、似ている成分となります。
バイオシミラーはすでに認可されているバイオ医薬品の後に作られ、多くの点において、例えば、特定の免疫システムを標的にすることや、皮下注射または静脈注射といった投与方法など、バイオシミラーは先行バイオ医薬品とかなり類似していますが、国によって、開発や承認基準が多少異なっています。米国食品医薬品局(FDA)は、他の医薬品と比べて、バイオシミラーの承認の過程は異なり、バイオシミラーが先行バイオ医薬品と同等に安全で効果的である、と保証したものを認可しています。特定の先行バイオ医薬品のバイオシミラーとして認可されるためには、以下の4つの条件を満たしていなければなりません。
免疫システムは通常病気や感染からカラダを守るために働きます。乾癬や乾癬性関節炎の患者さんでは、免疫システムが過剰に活動しているため、炎症を引き起こしたり、皮膚細胞の成長を早めたりします。生物学的製剤は、炎症を引き起こしうる免疫システムによって放出される特定のタンパク質であるサイトカインに作用し、過剰な免疫システムの機能を抑制します。バイオシミラーを含む全ての生物学的製剤は、通常、中等度から重症の乾癬及び進行性の乾癬性関節炎の患者さんに処方されます。
現在、開発及びテスト中の他のバイオシミラーもありますが、現在までに3つのバイオシミラーが乾癬と乾癬性関節炎の治療としてFDAに認可されています。
ただし、今のところこれら3つのバイオシミラーはまだ処方はできません。
免疫システムが破綻している場合やウイルス感染がある場合です。結核や他の感染症の検査はバイオシミラーを含む生物学的製剤による治療を始める前に必須です。
バイオシミラーのリスクや副作用は先行バイオ医薬品と同様です。バイオ医薬品による治療を考える人は、短期的、長期的な副作用やリスクについて医師と話すべきでしょう。利益だけでなくリスクを考えることも重要です。
バイオ医薬品の典型的な副作用として、腹痛、感冒症状、頭痛、注射部位の反応、上気道感染が挙げられます。もし副作用の症状と思われることがあれば、医師に相談して下さい。また、バイオ医薬品による治療をしている間は、より感染しやすくなるかもしれません。寒気を感じる、発汗、発熱、無気力、鼻詰まり、息切れ、排尿時に痛みやほてりがある、、皮膚の赤み、腫れ、熱感、といった感染の兆候がある場合は、医師にすぐに連絡して下さい。また、胎児や乳幼児への生物学的製剤の影響は明らかになっていませんので、妊婦、授乳中の女性への処方は治療の有益性がリスクより上回る場合に限られます。
現在摂取しているサプリメントやビタミン、医薬品、治療を医師に教えることは重要です。全ての先行バイオ医薬品と同様に、バイオシミラーは局所や光線療法を含む他の治療の選択と一緒に使うことができます。先行バイオ医薬品であるEnbrel®やHumira®、Remicade®は、メトトレキサートと同時に使用する際、安全で効果的であることが示されています。これはこの3つのバイオシミラーであるErelzi®やAmjevita®、Inflectra®は、メトトレキサートと同時に使用する際に安全で効果的であるかもしれないことを意味します。Inflectra®はRemicade®のバイオシミラーであるので、光線療法と組み合わせた治療は皮膚ガンのリスクを増加させるかもしれません。また、生物学的製剤と相互作用する薬は、それぞれのバイオシミラーと組み合わされないはずです。他の治療と組み合わせてバイオシミラーを使用することがあなたにとって正しいかを医師に相談して下さい。
バイオシミラーは既に認可された先行バイオ医薬品と、品質、有効性、安全性の観点から類似したものです。バイオシミラーが先発品と差がなく、どちらを使っても変わりがないと承認された場合、米国のある州では、薬剤師は処方した医師に知らせずにバイオシミラーを処方するかもしれません。しかしながら、バイオシミラーは先発品の完全なコピーではない、ということを心に留めておいて下さい。医師は治療の決定までには多くのことを考慮していますので、薦める治療の利点と潜在的なリスクについて担当医と話しましょう。
自己免疫性疾患や癌などに高額な生物製剤が使われるようになって医療費を圧迫することが話題になっている今日この頃です。このような製剤もジェネリック医薬品のようにバイオシミラーという製剤を用いる動きがあります。
こうした製剤の有効性は高いのですが、国民の医療費を考える観点からも、病気を根治的にコントロールする観点からも炎症性サイトカインを発生させないようなライフスタイルを身につけたいものです。
〈参考文献〉
https://www.psoriasis.org/about-psoriasis/treatments/biosimilars