カテゴリ:
最近の研究では、乾癬に罹患している患者さんにおいて、骨粗鬆症の初期形態である骨減少症の有病率が高いことが判明しました。また乾癬や乾癬性関節炎を患う患者さんは骨減少症や骨粗鬆症の有病率が高いことが明らかになってきています。
骨粗鬆症および骨減少症により、骨が薄くかつ弱くなり、骨密度が低下します。米国骨粗鬆症協会によれば、約5400万人のアメリカ人が骨粗鬆症または何らかの骨量の低下を有しています。
ローマのサピエンツァ大学の研究チームは、43名の乾癬患者の骨減少症と骨粗鬆症の重症度を調べたところ、乾癬患者の60%が骨減少症を有し、18%は骨粗鬆症に進行していることが明らかになり、リウマチ学会誌に掲載されました。
ローマの研究チームの調査では、乾癬を罹患している期間が長ければ長いほど、骨減少症や骨粗鬆症のリスクが高まり、乾癬と診断されてから毎年5%ずつリスクが増加することが明らかになりました。さらに、骨量減少は一般的に男性より女性に多く見られるとされていますが、この研究では骨減少症と骨粗鬆症は男性により多く見られました。
研究者らは、乾癬に起因する炎症が、乾癬患者さんにおいて骨量減少のリスクが高い理由の1つである可能性があるとしています。この研究で報告されている通り、乾癬性疾患に関与するいくつかの炎症性サイトカインは、骨粗鬆症にも関与していることが分かっています。また、乾癬および乾癬性関節炎における慢性炎症と骨量の減少は非常に深く結びついており、慢性炎症がミネラル密度の低下を引き起こし、骨吸収と骨修復との間の不均衡を引き起こす原因となるのではないかという学説も提説されています。
今まで専門家は、乾癬患者さんよりも、関節の痛みや炎症が増加する乾癬性関節炎の患者さんに骨密度低下がより多く見られると考えていました。今回の研究では、19名の乾癬性関節炎患者さんを対象に調査されていますが、乾癬性関節炎を有しない乾癬患者さんより乾癬性関節炎を有する患者さんの方が高い有病率であることを特定するまでには至りませんでしたが、今後の研究でさらに詳しく調査を実施することを検討しているそうです。
今までは、乾癬や乾癬性関節炎の患者さんにおいて、骨減少症や骨粗鬆症を発症するリスクが高いことに対する認知度が低く、未治療で放置されがちでした。様々な研究により、乾癬や乾癬性関節炎を患う患者さんを診察する場合、骨減少症や骨粗鬆症の症状が見られないか、注意を払って診察すべき、と考えられるようになってきています。また、骨減少症や骨粗鬆症について、全ての乾癬患者さんに注意喚起をする必要性が認識されるようになりました。特に長期間、乾癬に罹患している場合、骨減少症の検査、骨粗鬆症の検査、骨代謝の検査を受けるべきだと考えます。
50歳以上の男性もしくは閉経後の女性で乾癬性関節炎を患っている場合、通常の成人より骨粗鬆症のリスクが高いため、最初に骨密度をチェックし、その後も定期的にチェックするようにしています。若い患者さんの場合は、ステロイド使用や骨折のようなその他のリスク要因がある場合にも、まず検査をします。骨密度と骨折リスクアセスメント(FRAX)アルゴリズムを使用した臨床リスク要因に基づいた分析の結果、骨折のリスクが高いと診断された患者さんに対しては、骨粗鬆症薬の投与を開始しているとのことです。
骨粗鬆症と骨減少症の予防方法はほぼ同じと考えてよいでしょう。まず十分な量のカルシウム(1000〜1500mg)、同量のマグネシウムと高容量のビタミンDを摂取し、定期的に運動するようにします。運動の中では筋力トレーニングが骨の強化に役立ちます。また、骨の健康状態を定期的にチェックし、異常がある場合には早期に発見出来るよう、努めましょう。また、ステロイドの内服は骨量減少を早める副作用がありますので、このような薬を服用する際には十分注意する必要があります。
食事は骨の健康に大きな影響を及ぼします。アルコールやカフェインは骨を弱くすることが分かっています。アルコールを適度な量を飲むことは問題ありませんが、1日に2杯以上のアルコール摂取は骨の形成に悪影響を与え、骨のカルシウム代謝が難しくなることが分かっています。
どのような運動も取り組んでいるうちは骨粗しょう症を予防するのに有効です。但し、運動の効果は続けることに意味があるので、止めてしまうと効果が無くなってしまいます。
昔運動をしていたから大丈夫なのではなくて、いつまでも続けることに意味があります。
有酸素運動:ウォーキング、ハイキング、エアロビ、水泳、ダンス、サイクリング等
筋トレ:水泳、ダンベル運動
バランス運動:転倒による骨折は寝たきりの二大要因の一つなので姿勢とバランスを良く保つことは転倒を防ぐ重要な要素です。ピラティス、ヨガ、太極拳、エクササイズボールのトレーニング等など
乾癬や乾癬性関節炎の治療が骨の健康を損なう恐れがありますので、定期的に医師の診察を受け、骨の状態を確認してください。骨を強く保つために必要であれば上記のようなライフスタイルや運動を取り入れるようにしてください。
乾癬の原因の一つにビタミンDの低下があるので乾癬と骨粗しょう症が関連していることはある意味当然なのかもしれません。お肌の改善のためにもマグネシウム、亜鉛などの投与は重要になると思います。骨粗しょう症と言えば通常は牛乳が推奨されますが、乾癬の患者さんの多くが乳糖不耐症を持ち合わせていることを考えると違うソースからの摂取が望まれます。
参考文献
https://www.psoriasis.org/advance/link-found-between-osteoporosis-and-psoriasis-psoriatic-arthritis
Psoriasis or psoriatic arthritis patients show higher osteoporosis and osteopenia prevalence: Study