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グルテン過敏症(軽度も含む)である人は、米国では人口の5〜6%であるという調査結果があります。またいくつかの研究調査(米国以外も含む)で、セリアック病(グルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患)の有病率は約1〜2%とされています。
ただし、実際にセリアック病として臨床的に診断されている人はそのうちの約5〜27%と少なく、自分がセリアック病と気づいていない人が多数を占めており、グルテン過敏症にしても自分ではグルテン過敏症であることに気がついていない人も多数いると考えられます。乾癬を持つ患者さんの多くは、グルテンフリーダイエットが乾癬の症状が改善するのかどうか興味があると思いますが、最近の研究で、乾癬を患う患者さんの推定約25%はグルテン過敏症であるとの結果が出ています。
グルテンとは、一般的な穀類に含まれるタンパク質の一種です。グルテンは、小麦、大麦、ライ麦およびこれを原料とする全てものに含まれます。
グルテンが入っている食べ物としてわかりやすいのは、パン、パスタ、クラッカーなどです。一方、グルテンは、サンドイッチ用の肉や醤油、甘草、アイスクリーム、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、サラダのドレッシングなどの食品加工の際に、予期しない多くの場所で使用されているので注意が必要です。
グルテンと乾癬の関連性を立証する科学的根拠はまだ必要なものの、グルテンフリーダイエットを実施した乾癬患者さんが劇的な症状の改善を認めたケースがいくつも報告されています。乾癬患者さんの中にはグルテン過敏症やセリアック病の患者さんが存在します。いずれの場合もグルテンフリーの食事療法に切り替える必要があります。ご自身がセリアック病なのかどうか判断がつかない場合は、お近くのクリニックで経験のある医師に相談したうえで血液検査を受けることをお勧めします。
2009年に実施された研究によるとグルテン過敏症を持つ患者さんがグルテンフリーダイエットを実践したところ乾癬の症状が好転したという結果が報告されています。2010年に実施された研究より、HLA-Cw6という乾癬に関わるMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を持つ乾癬患者さんはグルテン過敏症である可能性が高いという結果が報告されています。また、セリアック病の人のほとんどがHLA-DQ2かHLA-DQ8のいずれかが陽性です。もしグルテン過敏症やセリアック病の場合はグルテンフリーダイエットを実践することにより乾癬の症状が大幅に好転する可能性があります。グルテンフリーダイエットを開始する前に、医師または栄養士に必ず相談するようにしてください。
アメリカで実施された研究では、軽度の乾癬を患う患者さんにグルテンを摂取させたところ、グルテン摂取による乾癬の症状の悪化は認めませんでした。グルテンフリーダイエットが全ての乾癬患者さんの症状を和らげるとは限りませんが、グルテンフリーダイエットにより乾癬の症状が緩和した場合、患者さんの消化機能が向上しより多くの栄養分を体内に取り込めるようになるほか、腸内で炎症が起きなくなることによって皮膚の炎症にも良い影響があると言えます。
最近セリアック病やグルテン不耐性の診断率が劇的に上がりつつあることから、大手のスーパーマーケットやレストラン、パン屋さんでグルテンフリーの製品が手に入るようになってきています。グルテンフリーダイエットを実施する場合は、経験のある医師にグルテンについて良く学ぶ必要があります。また、グルテンフリーダイエットを実践している間は、食品の栄養表示ラベルを定期的にチェックする必要があります。食品製造業者は何の通知もなく突然原材料を変更する場合もありますので気をつけましょう。
グルテンフリーを選ぶ時には、ラベルをよく確認しましょう。小麦と表記のあるものは避けなければなりません。また小麦だけではなく、小麦を元に作られているデュラム小麦、小麦全粒粉、カムット小麦、セモリナ粉、スペルト小麦など、小麦の全てを避ける必要があります。大麦を原料とする製品に対しても同じことです。麦芽エキスや麦芽酢、ライ麦やグルタミン酸ナトリウム、醤油も避ける必要があります。食品に小麦フリーと記載されていても、グルテンフリーではないことに気をつけましょう。
グルテンフリーダイエットを実践しても新鮮な野菜や果物の摂取制限はありませんので、なるべくこういった健康的な食物を食べるよう心がけましょう。牛肉、鶏肉、魚、羊肉、豚肉及び乳製品もグルテンフリーです。ただし添加剤や化学肥料を用いた食品に気をつけて下さい。
食品製造業者によってはグルテンフリーの食品を美味しくするため、糖分や飽和脂肪酸、防腐剤を入れることがあります。グルテンフリーはシュガーフリーとも異なりますので、バランスの良いダイエットになるよう摂取品目に気をつけましょう。また、グルテンフリーダイエットをすることで、脂肪を多く摂ったり、食物繊維の摂取が減ったりしないように気をつけましょう。
グルテンフリーの食事療法を実践した結果として炎症が治まるまで数ヶ月かかることがあります。ですから、グルテンフリーダイエットを始めた場合は、最低でも3カ月は一切のグルテンを口にしないようにしてください。もし3カ月後に症状緩和が一切見られないようであれば、いったんグルテンフリーをやめ、毎日の食事で普通に摂取してみてください。そこから3〜4日間は経過観察の期間とし、自身の症状を観察し、かゆみがひどくなった、関節が痛い、頭痛がする等の症状が出た場合、その症状を見逃さないようにしてください。もしこういった症状が全く現れなかった場合、グルテンフリーのダイエットを継続する必要はありません。
グルテンフリーはテニスプレーヤーのジョコビッチ選手の本で一躍注目されれるようになりました。乾癬においてはグルテンによる腸内環境の悪化による炎症性サイトカインの増加が起因している可能性があります。ジョコビッチ選手はグルテンと乳糖に不耐症があることを告白していましたが、当院の印象ではグルテンもさることながら乳糖(乳製品)による影響の方が大きいように思えます。もちろん人種による差が関与しているのかもしれません。
参考文献:
https://www.psoriasis.org/treating-psoriasis/complementary-and-alternative/diet-and-nutrition/gluten-free-diet
http://www.webmd.com/diet/news/20120220/gluten-sensitivity-fact-or-fad#1