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乾癬と新薬 2016年

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★新薬ができるまで

 

新薬の開発には、10〜20年かかると言われています。新薬は基礎研究を経て、非臨床試験、臨床試験(治験)へと進んでいきます。治験は3つのフェーズに分かれます。フェーズⅠでは、比較的少数の健常者を対象として、副作用などの安全性について検証します。フェーズⅡでは、少数の患者を対象として、有効で安全な投薬量や投薬方法などを確認します。フェーズⅢでは、大規模の治験となり、より多くの患者を対象として、有効性や安全性について既存薬との比較などを行います。日本ではその後、厚生労働省の承認審査へと進んでいきます。

 

★乾癬の新薬はありますか?

 

現在、乾癬や乾癬性関節炎に対しても新薬の開発が進んでおり、非臨床試験、治験のフェーズⅠからフェーズⅢまで様々な段階にあり、注射または経口投与、局所塗布などの薬が開発されています。バイオシミラー(バイオ後続品)と呼ばれる「先発医薬品の特許が切れた後に販売されるバイオ医薬品」も同様に開発が行われています。バイオシミラーはジェネリック医薬品と一見すると同じと思われるかもしれませんが、大きな違いがあり、ジェネリック医薬品が先発医薬品と比べた時に、有効成分自体は完全に同じ成分が使われているのに対し、バイオシミラーでは有効成分は全く同じではなく、あくまでも似ている成分が使われているため、「新薬を販売するときに準ずる試験」を行わなければなりません。次に、乾癬や乾癬性関節炎の新薬の開発状況をご紹介します。

 

★乾癬と乾癬性関節炎の新薬:注射製剤

 

乾癬性関節炎に対する注射製剤

伯Janssen社のTNF-α阻害薬:Simponia Aria (golimumab) 

乾癬性関節炎と乾癬に対する注射製剤

瑞Novartis社のIL-17A阻害薬:Cosentyx (secukinumab)

韓Celltrion社のRemicade (infliximab)のバイオシミラー:Inflectra (infliximab-dyyb)

瑞Sandoz社のEnbrel (etanercept) のバイオシミラー:Erelzi (etanercept-szzs)

米Amgen社のHumira (adalimumab) のバイオシミラー:Amjevita (adalimumab-atto)

乾癬に対する注射製剤

米Eli Lilly社のIL-17阻害薬:Taltz (ixekizumab)

米Amgen社のTNF-α阻害薬:Enbrel (etanercept) 4〜17歳対象

 

★乾癬と乾癬性関節炎の注射製剤フェーズⅢ

 

乾癬性関節炎に対する注射製剤

米Bristol-Myers-Squibbの免疫抑制剤(T細胞の活性化を抑制):Orencia (abatecept)

米Eli Lilly社のIL-17阻害薬:Taltz (ixekizumab)

乾癬に対する注射製剤

伯Janssen社のIL-23阻害薬:Guselkumab (CNTO 1959)

伯/米UCB/Dermira社のTNF-α阻害薬:Cimzia (certolizumab pegol)

独/印Merck and Sun Pharma社のIL-23阻害薬:Tildrakizumab (MK-3222/SCH 900222)

独Boehringer-Ingelheim社のIL-23阻害薬:Risankizumab (BI 655066)

伯Janssen社のIL-12とIL-23阻害薬:Stelara (ustekinumab)  大人は承認済。青年対象

加/英Valeant Pharmaceuticals and AstraZeneca社のIL-17阻害薬:Brodalumab

 

★乾癬と乾癬性関節炎の注射製剤フェーズⅡ

 

フェーズⅡの注射製剤は、日本の武田製薬の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子拮抗薬であるNamilumabを含む8種類あり、作用機序はフェーズⅢやすでに新薬として販売されているものとは異なるものがあります。

 

乾癬性関節炎に対する注射製剤

米/加Alder BioPharmaceuticals/Vitaeris社のIL-6阻害薬: Clazakizumab

米AbbVie社のIL-17Aと TNF阻害薬:ABT-122

独Boehringer-Ingelheim社のIL-23阻害薬:Risankizumab

伯Janssen社のIL-23阻害薬:Guselkumab (CNTO 1959)

乾癬性関節炎と乾癬に対する注射製剤

米AbGenomics International社の免疫抑制剤(T細胞の活性化を抑制):Neihulizumab (AbGn-168H)

乾癬に対する注射製剤

独/米Biotest/AbbVie社の免疫抑制剤(抗CD4抗体; regulatory T細胞の活性化 cells):Tregalizumab (BT-061)

日Takeda社の抗炎症薬(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子拮抗薬):Namilumab

米Idera Pharmaceuticals社のTLR7,8,9拮抗薬:IMO-8400

 

スイスのノバルティスグループのジェネリック部門でEnbrel (etanercept)の

 

★乾癬と乾癬性関節炎の新薬:経口治療薬

 

現在、乾癬と乾癬性関節炎に対する経口治療薬は選択肢があまりありませんが、フェーズⅡの経口治療薬は10種類あり、ヒスタミンH4受容体拮抗薬やJAK1,JAK2阻害薬など既存の薬剤と作用機序が異なるものがあります。

 

乾癬と乾癬性関節炎に対する経口治療薬

米Celgene Corporation社の抗炎症薬(phosphodiesterase-4 inhibitor):Otezla (apremilast)

 

★乾癬と乾癬性関節炎の経口治療薬フェーズⅢ

 

乾癬性関節炎に対する経口治療薬

米Pfizer社の抗炎症薬(JAKキナーゼ阻害薬):Tofacitinib (CP-690,550)

乾癬に対する経口治療薬

米Forward-Pharma社の抗炎症薬(フマル酸):FP187

以Can-Fite BioPharma社の抗炎症薬(アデノシンA3受容体阻害薬):Piclidenoson (CF101)

西Almirall社のジメチルフマル酸:LAS41008

 

★乾癬の経口治療薬フェーズⅡ

 

米Cellceutix Corporation社の免疫調節薬:Prurisol

米Dr. Reddy’s Laboratories and XenoPort社の抗炎症薬(フマル酸):XP23829

米Kadmon Corporation社の抗炎症薬(ROCK2阻害薬、IL-17減少):KD025

瑞Basilea社の皮膚細胞阻害薬(レチノイド):Alitretinoin  乾癬(膿疱)対象

米ApoPharma社(作用機序は特許のため非公開):Apo805K1

丁LEO Pharma社の抗炎症薬(作用機序は特許のため非公開):LEO22811

米Eli Lilly/Incyte社の抗炎症薬(JAK1,JAK2阻害薬):Baricitinib (Ly3009104/INCB28050)

以VBL Therapeutics社の抗炎症薬(oxidized phospholipid):VB-201

英Ziarco Pharma Ltd.社の抗炎症薬(ヒスタミンH4受容体拮抗薬):ZPL-389

米Vitae Pharmaceuticals社の抗炎症薬(IL-17阻害薬):VTP-43742

 

★乾癬の新薬:局所治療薬

 

乾癬に対する局所治療薬

丁LEO Pharma社(作用機序は特許のため非公開):Enstilar (LEO 90100)

米Promius Pharma LLC社の抗炎症薬(ジプロピオン酸ベタメタゾンのスプレー):Sernivo (DFD-01)

 

★乾癬の局所治療薬フェーズⅢ

 

西Almirall社の抗炎症/皮膚細胞阻害薬(作用機序は特許のため非公開):LAS41004

瑞Polichem社のビタミンD製剤:P-3073 乾癬(爪)対象

米Valeant Pharmaceuticals社(作用機序は特許のため非公開):IDP-118

日Maruho Co. Ltd.社の抗炎症/皮膚細胞阻害薬(作用機序は特許のため非公開):M518101

 

★乾癬の局所治療薬フェーズⅡ

 

フェーズⅡの局所治療薬は7種類あり、TrkAキナーゼ阻害薬など作用機序が既存の薬剤とは異なるものがあります。

米Moleculin, Inc社の抗炎症薬(p-STAT3阻害薬):MOL4239

米Anacor社の抗炎症薬(phosphodiesterase-4 inhibitor):Crisaborole

米Sienna Biopharmaceuticals社の皮膚細胞阻害薬(TrkAキナーゼ阻害薬):SNA-120/CT 327

丁LEO Pharma社の抗炎症/皮膚細胞阻害薬(ビタミンD/ステロイド) 青年対象

丁LEO Pharma社(作用機序は特許のため非公開):LEO 90100(スプレー・軟膏)

米Provectus Biopharmaceuticals社の皮膚細胞阻害薬(ローズベンガル):PH-10

米Pfizer社の抗炎症薬(JAKキナーゼ阻害薬):Tofacitinib (CP-690,550)

 

★新薬への期待

 

フェーズⅡ、フェーズⅢの治験中の治療薬は、将来的な治療薬の選択肢を増やすだけでなく、異なる作用機序によって引き起こされる乾癬及び乾癬性関節炎の特異的な治療に繋がる可能性があり、今後が注目されています。

【渋谷セントラルクリニックDrコメント】

乾癬は一度進展してしまうと体の隅々で大きな合併症を引き起こしてしまう可能性があります。

そういった意味では生物製剤がこうした合併症の進展を予防してくれることは喜ばしいと思います。その一方で乾癬の原因としてのTNF-αなどの炎症性サイトカインの発生要因が分かってきたことを考えると初期の段階で適切な治療をすることが重要になると考えます。

またこうした生物製剤は非常に高いので国の医療費を考えてみても早いうちに良い治療を行うことが重要と言えるのではないでしょうか?

〈参考文献〉

https://services.psoriasis.org/drug-pipeline/index.php

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