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ストレスを減らすための良質な睡眠が大事
酒さの予防として忘れてはならないのが、睡眠の重要性です。不十分な睡眠は体にとって大きなストレスとなります。酒さ以外の自己免疫性の皮膚疾患と同様にストレスによって炎症性サイトカインが誘発されたりホルモンの低下を招いたりすることによって酒さが誘発されたり、症状の悪化を招いたりする可能性があります。
質の悪い睡眠は、酒さをより悪化させる要因とされています。もし不眠症を患っている場合、まず睡眠不足について詳しく理解する事が有益です。不眠症を解決することは酒さの赤ら顔や大人ニキビを改善して透き通った肌を取り戻すために役立ちます。
睡眠不足によるストレスによってコルチゾールと呼ばれるホルモンが体内で分泌されます。コルチゾールには血糖値を上げる作用、炎症を抑える作用が良く知られています。ストレスによって長い間コルチゾールが分泌されていると狭心症などの心血管のトラブルや肥満の原因となるだけではなく、免疫力の低下を引き起こします。最新の研究や臨床実験より、コルチゾールが皮膚、特に酒さに冒された皮膚に悪影響を及ぼすことが実証されています。
血液中の血糖値が上昇すると、AGEs(終末糖化物質)として知られている糖化タンパクが皮膚のコラーゲンやエラスチンと結合して壊れやすくなり、柔軟性が低下します。鼻瘤(鼻の隆起)、吹き出物やニキビによって損傷を受けた部位の皮膚は通常よりも治るまでに時間がかかり、酒さの症状はより長く留まります。砂糖で一旦コーティングされてしまったコラーゲンとエラスチン繊維は元に戻せないので、身体はそれらを分解して新しいものを形成します。結果としてコラーゲンやエラスチンが枯渇し、皮膚が薄くなり弾力性が低下します。いくつかの研究では抗酸化物質によって過剰な糖が皮膚成分に付着する過程を防ぐことができると示唆されています。もちろん言うまでもなく糖化ストレスの治療をしなくても良いようにするために普段から予防を心がけることの方が大切です。
多くの酒さの患者さんが乾燥肌にも悩まされています。乾燥肌の原因は遺伝、不適切なスキンケア、低コレストロール食や肌に刺激の強い洗顔料の使用など多様にありますが、コルチゾールも影響を及ぼしていることがわかっています。また酒さがある方の多くはシワに悩んでいますが、この要因の一つとしてコルチゾールが取りざたされています。研究によると、コルチゾール値が上昇するにつれて、皮膚のバリア機能が低下し、皮膚から水分が蒸発し、潜在的な刺激となる物質がよりたくさん浸透してしまいます。乾燥以外にも、コルチゾールは皮膚のかぶれや炎症、酒さの症状を悪化させる要因の発生率や重症度を高めます。
コルチゾールの体内生産量を減らすことで、老化や炎症の影響を抑制することにより酒さの悪化を防ぐことができます。コルチゾールの分泌を減らすためにはストレスマネジメントが必要不可欠です。私たちはストレスマネジメントとして、良質な睡眠をとったり、エクササイズを取り入れたり、アロマテラピー、瞑想など、個人にあったリラックス方法を取り入れることをお勧めしています。このことによってコルチゾールの過剰分泌を抑えて酒さの症状の改善を期待することができます。
特に睡眠はコルチゾールの産生量を減少させるので、少なくとも毎晩6~7時間は寝るように心掛けて下さい。睡眠は成長ホルモンの分泌を高めることによって弱っている皮膚組織を再生させるのに有用です。このためには、午後10時よりも前に睡眠の準備をすることが大事です。アルコールやカフェインの摂取を控え、コーヒーや紅茶から緑茶を飲むように切り替えることは成長ホルモンの分泌を増やすために重要な生活習慣です。緑茶にはカフェインが含まれていますが、それ以上にAGEsを下げる可能性があるポリフェノールを含んでいますので少量であれば摂取しても良いと考えます。
砂糖の摂取量を減らす事でもコルチゾール値は下がります。複合炭水化物(体内にゆっくりと吸収され、エネルギーとして使われなかった分はグリコーゲンとして貯蔵される)を多めに摂取したり、デザートやデンプン質食品などに含まれる粗糖、または白パンやポテトのような砂糖に素早く変換される血糖指数の高い食品の摂取量を減らしたりすることも有効です。
魚類(特にサケやサバ)、亜麻仁およびサプリメントに含まれるオメガ3や6の必須脂肪酸は、過剰なコルチゾールに起因する炎症を軽減することができます。クルクミン(ウコンポリフェノール)、カモミールやアセチルサリチル酸、および夏白菊などの抗炎症成分を含有するスキンケア製品は、AGEsによって引き起こされる赤ら顔やフリーラジカル損傷を抑える助けにもなります。
夜間に適切に眠る事ができないのはライフスタイルに直接的な原因があります。就寝前1時間以内の身体運動、カフェインまたはアルコールの摂取などが主な要因です。夜遅くまで仕事をしている人もまた、就寝前にくつろぎの時間を十分に持つ事ができずに不眠に悩まされていることでしょう。薬物療法は体のリズムやバランスを壊してしまうこともありますので注意が必要です。
不眠症の原因となる可能性の一つにインターネットがあります。就寝の1時間前にはチャット、買い物、ゲームをしないようなライフスタイルが大事です!睡眠前のネットサーフィンやその他のインターネット活動は睡眠の質を下げる原因になるのでインターネットをする時間は気を付けてください。
不眠症の原因を発見するために睡眠日記をつけると良いでしょう。就寝前に、その日に何をしたのか、特に珍しかった出来事を記録して下さい。エクササイズ、ダイエット、気分、そして日中どのくらいストレスの無い状態で「静かな時間」を過ごしたかを記録して把握しましょう。また朝にはどのくらい良く眠れたかを記録して下さい。1~2週間後にはパターンが見え、睡眠を良くする要因、悪くする要因を特定する事ができるようになっていきます。
時差ぼけは海外に頻繁に行き来する人にとって大きな問題となります。睡眠と覚醒時間の突然の変化は、完全に調整できるまでに数日かかり体には大きな負担となります。時差ぼけ予防にはお勧めしたいのは以下の方法です。宜しければお試し下さい。
*出発前に目的地の現地時間に時計を合わせ、フライト中は現地時間を基準に行動する。
*飛行機に搭乗する前と飛行中に沢山の水を飲む。(機内の湿度は非常に低く、乾燥を補うため多めに水を飲む必要があります。脱水症状は時差ぼけをさらに悪化させます。)
*飛行中出来る限り良く眠れるよう客室内に耳栓、マスク、小さな枕を持参する。
*目的地では、昼であることを体に認識させるために、すぐに部屋に入らずに日光を十分に浴びることも大事です。(肌は屋内の蛍光灯の光と太陽光の違いが分かります。)
不眠症は、場合によって、慢性痛、うつ病、喘息などの精神的問題、または栄養、ホルモンの影響などによって引き起こされるナイーブな問題です。もし睡眠の質が改善しない場合は、これらの問題に関する専門的なアドバイスを求める事をお勧めします。医療者による栄養の見直し、サプリメントなどはこうした状況から抜け出すきっかけになると思います。