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酒さと皮膚のバリア機能

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酒さでは皮膚のバリア機能は低下しているのか?

 皮膚には、異物や病原体が体内へ侵入するのを防ぐ働きがあります。この働きは単に外界との境界を作っているだけでなく、皮脂の分泌を行ったり、状況に合わせて血管や神経を活性化させたりすることで、皮膚のバリア機能を保っています。

しかし、皮膚のバリア機能はいつも正確に働くものではありません。今回は、赤ら顔と大人ニキビが特徴的な皮膚の病気である酒さと皮膚のバリア機能の関係についてご紹介していきます。

酒さの人は敏感肌って本当?

酒さによく見られる症状として敏感肌が挙げられることは少なくありません。NRS(全米酒さ協会)による1012人の酒さの患者を対象に行われた大規模な研究データによると皮膚に刺激を与えるような化粧品や石鹸などを使用した後の症状を観察したところ、82%もの患者さんが、肌に刺すような痛みを感じたと報告されています。また、この過敏症状は過去に酒さの症状が出た部分の皮膚に起こりやすいことがわかっています。

 オイリー肌と乾燥肌、酒さになるのはどっち?

皮膚の表面にある皮脂腺からは、脂質を豊富に含んだ皮脂が分泌されています。

皮脂の分泌量は人によって異なりますが、酒さは乾燥肌であっても、オイリー肌であっても起こりうるといわれています。最近行われた、酒さの患者さんの肌のコンディションを調べた研究では、オイリー肌よりも乾燥肌の患者さんの方が多いことが分かりました。

酒さでは皮脂が変化する?

皮脂は、弱酸性の脂肪酸と抗酸化物質を含んでいます。病原菌は酸に弱いため、弱酸性であるだけでも抗菌作用を示しますが、炎症を抑える作用のある抗酸化物質を含んでいることで、さらに抗菌作用が強化されています。

ある別の研究では、赤ら顔に加えて大人ニキビが生じている酒さの患者さんでは、皮脂に含まれる脂肪酸のうち、ミリスチン酸の濃度が高く、逆に、トリコサン酸、リグノセリン酸などの脂肪酸の濃度は低いことが報告されています。この結果から、皮脂に含まれる脂肪酸の種類によっても、皮膚のコンディションが変化することがわかってきています。

酒さと炎症、炎症を起こすとどうなるの?

酒さの患者さんは、環境から受ける刺激によって免疫の反応が変化し、炎症を起こしやすくなるといわれています。通常、細胞が傷を受けると、一時的に結合組織(細胞と細胞の間を埋めるように敷きつめられていて、細胞を支える働きをしている組織)が増えて、応急処置を行います。そして、一時的に増えた結合組織は、細胞の回復とともに少しずつもとの状態へと置き換えられていきます。しかし、炎症が続くと、この置き換えが間に合わずに、炎症が起こった部分が線維化(結合組織が過剰に増え、元の状態に戻らない)してしまいます。

皮脂の抗菌作用と自然免疫

私たちの身体には、病原菌に反応し身体を守るように働く免疫があります。この免疫には、異物であればすぐに反応して攻撃を始める「自然免疫」と、侵入した異物がどのような病原体なのかを認識してから、その病原体に合わせて効率的に攻撃を行う「獲得免疫」の大きく2種類に分かれます。

皮脂には抗菌作用があるとご紹介しましたが、これは自然免疫に含まれ、抗菌ペプチド(AMP)という物質によって行われています。抗菌ペプチドは防御の第一線を担う重要な免疫機構ですが、その一方で、過剰に分泌されると正常な細胞を傷つけてしまうことが知られています。

酒さで注目されている抗菌ペプチド(AMP)

AMPにもいくつか種類がありますが、その中でも酒さにおいて最も注目されているのは「カテリシジン」という物質です。健康な皮膚では、ケラチノサイト(皮膚の表皮を構成する角化細胞)の中には、カテリシジンはほとんど存在していません。一方、感染や傷が生じている皮膚(酒さを含む)では、カテリシジンが多く分泌されています。

カテリシジンは、日光の照射やニキビダニの寄生など、さまざまな影響を受けてカテリシジンLL-37という物質に変化しますが、このカテリシジンLL-37は、皮下に存在する毛細血管を拡張させ、炎症や紅斑(赤い皮疹)を引き起こす原因になります。

酒さの赤ら顔と血管、カテリシジンの関係

顔の中央が紅潮する「赤ら顔」は、酒さの主な症状の1つで、初期症状としても知られています。初めは色が変化するだけで、赤みは徐々に改善していきますが、赤ら顔を何度も繰り返していると、次第に赤みが引かなくなり、色の変化に加えて火照り、熱感や刺すような痛みを伴うようにもなります。

酒さの患者さんでは、赤みのある部分に、多くのカテシリジンLL-37が存在しています。カテシリジンには毛細血管を拡張させる作用があり、毛細血管が拡張すると、血管の内腔が広がることで皮下を流れる血液の量が増えます。すると、血液の色を反映して、肌が赤みを帯びるようになります。これに加え、カテシリジンLL-37には新たな血管を作り出す働きもあります。このため、酒さの病変部では、皮下の血管が増え、さらにそれが拡張することで、顔の赤みが強くなっていくのです。

自律神経が刺激を受けると血管は太くなる?

自然免疫だけでなく、刺激物を食べたときや、感情に変化が起こったときに生じるような自律神経の変化にも関連しています。

皮膚の浅いところには細い毛細血管、深いところには太い血管が走っています。この太い血管は、神経の変化に伴って、その血管径が拡張したり収縮したりします。

身体の熱は、血液を通って全身に運ばれるため、血管が太く、あるいは多い場所では温度が高くなります。酒さのように局所的に皮膚の温度が上がっているところでは、温度変化によって自律神経が刺激され、深部を走る太い血管は拡張します。

酒さとカプサイシン、辛いものを食べてもいいの?

最近の研究では、酒さの患者さんは、カプサイシンに反応して痛みの信号を発するTRPV1という受容体を多く持っていることが分かりました。カプサイシンは唐辛子などに含まれる辛み(痛み)成分の1つであり、酒さの患者さんでは、健康な人に比べてカプサイシンによる痛みを感じやすいことになります。また、カプサイシンだけでなく、カプサイシンと似た構造をもっている香水やハーブエキスなどを吸入してしまうことでも、カプサイシンを摂取したときと同じような不快感が生じることがわかってきています。

酒さが敏感肌な理由

通常、血管の中を血液が通るとき、血液中の水分が一部皮下に漏れて、血管内の水分が失われます。酒さでは、血管が増えたり、血管が拡張して血液量が増えたりしている状態になっており、炎症が起こりやすいだけでなく、肌の水分が失われやすくなっています。皮膚の水分が不足すると、細胞は干からびて傷つきやすくなり、皮膚のバリア機能は低下してしまいます。この結果、石鹸や温水、刺激物を含むような製品に過敏に反応してしまい、感覚の異常やかゆみ、痛みを引き起こす“敏感肌”になります。

酒さは単なる皮膚の病気ではない!?

酒さは単なる皮膚の病気ではなく、炎症や神経、血管など、さまざまな原因が複雑に絡み合っている病気です。そして、これらの症状は環境の変化によっても影響を受けます。

酒さの症状を改善させるためには、刺激の強い製品の使用は避け、適切な保湿を行うことが基本となります。

【渋谷セントラルクリニックDrコメント】

酒さ患者さんのお肌は敏感肌になっていることには、皮膚のバリアが破綻しているが原因となっています。皮膚バリアの破綻は肌表面の細菌叢の乱れも大きく関与しています。肌が乾燥がちなのは、肌細菌叢の乱れによってpH値が変化して角質層の剥離が悪くなってしまうこと(適切な肌のターンオーバーが起きなくなっている)に起因しています。つまり、角質層が剥がれにくくなっていることによって、毛穴が詰まり適切な油分が行きわたらなくなってしまうのです。

弱酸性の肌環境は、肌細菌叢を整える必要がありますがそのためには当院で使用しているクルクミンジェルを用いることが大事な要件となります。

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