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酒さってどんな病気? 酒さは主に顔にみられる皮膚の慢性疾患で、頬(ほお)や鼻、目、顎(あご)、額(ひたい)に病変が生じます。症状としては、赤みや紅斑(赤い皮疹)、丘疹(盛り上がった皮疹)、膿疱(中に白い膿が詰まっているニキビのような皮疹)などであり、赤ら顔や大人ニキビが生じることで日常生活に影響を及ぼす病気ともいえます。
酒さはその症状によって、4つの型と1つの亜型に分類されています。この分類では、ある型から別の型へ移行したり、無症状のものから重症のものへと変化したりすることがあります。 1型(紅斑毛細血管型酒さ):顔、特に顔の中心部が赤みを帯び、治りにくい紅斑が生じる型。皮膚のすぐ下にある毛細血管が拡張して、顔の表面に細い血管が確認できることもあります。 2型(丘疹膿疱型酒さ):一時的に顔の中心部に赤みや丘疹、膿疱が生じる型。 3型(腫瘤型酒さ):鼻や顎、額、頬、耳などにしこりが生じる型。 4型(眼型酒さ):目に何らかの症状が出る型。 亜型(肉芽腫性酒さ):非炎症性の皮疹で、褐色や黄色、赤色の硬い丘疹や小さなしこりが生じる型。
多くの慢性皮膚疾患と同じように、酒さでも長期間の治療が必要になります。酒さの治療法は数多く存在しており、それぞれ研究によって効果が証明されています。しかし全ての人に有効な治療は存在しないので、どの治療法が最も効果的なのかを医師に選択してもらう必要があります。 ここでは、これまで報告された酒さに関する論文をまとめることで、多数存在する酒さの治療法の有効性と安全性を評価した論文をご紹介します。
酒さは“Quality of Life(生活の質)”に多大な影響を与えうる病気の1つです。この研究は、酒さによる日常生活への影響を改善させるために、それぞれの型に合った適切な治療法を見出すことを目的に行われました。この論文では、これまでに雑誌やオンラインで発表された論文のうち、酒さの治療とその効果に焦点を当てている58報の論文を比較しています。対象となった患者数は合計6633人、治療期間は2~3ヶ月で、治療法は以下の6つのカテゴリーに分類されています(18報の論文が複数のカテゴリーをまたいでいます)。
メトロニダゾールとアゼライン酸クリームは酒さに効く? メトロニダゾール外用薬:酒さ改善効果にばらつきあり アゼライン酸クリーム:プラセボと比べて酒さ改善効果に対して有効率が高い メトロニダゾール外用療法の有効性は14報の論文で報告されています。メトロニダゾール外用薬の濃度の違い(0.75%と1%)による治療効果や副作用に差は見られていません。 アゼライン酸クリーム外用療法による有効性は6報の論文で報告されています。そのうち3報の論文では、アゼライン酸クリームとプラセボ(有効成分を含まない偽薬)の効果を比較した試験が行われており、アゼライン酸クリームを使用した群では70~80%の患者さんで酒さの症状に改善が見られたのに対し、プラセボ群では50~55%に留まり、有意な差が得られています。 またメトロニダゾールとアゼライン酸クリームを比較した論文が3報あり、そのうち2報の論文では統計学的に有意な差は指摘できないとしていますが、1報の論文では、アゼライン酸クリームの方がより効果があると結論付けています。
テトラサイクリンの内服は有効率が高い 2報の論文で、テトラサイクリンの内服治療が有効であることが示されています。うち1つの論文では、テトラサイクリン内服群では20人中17人(85%)で酒さの症状に改善が見られたのに対し、プラセボ群では症状が改善したのは19人中4人(21%)でした。もう1つの論文では、テトラサイクリン内服群では36人中28人(78%)で酒さの症状の改善が見られ、プラセボ群では42人中19人(45%)でした。 他にもドキシサイクリンの内服治療が2報の論文で、有効であることが示されています。ドキシサイクリン内服群では127人中48人(38%)が改善し、プラセボ群では124人中32人(26%)の改善に留まりました。ドキシサイクリンの内服治療では、用量の違い(40mgと100mg)による治療効果の差は認められませんでしたが、高用量である100mgの方が、副作用が現れやすいことが分かりました。
パルスダイレーザー(PDL: 595nm)とNd: YAGレーザー(1064nm)の有効性を調べた研究では、いずれも鼻に見られる症状に改善が見られました。またレーザーの違いによる効果の差はみられませんでした。
メトロニダゾール、アゼライン酸クリームおよびスルファセタミドの外用療法、ドキシサイクリンの内服治療は、紅斑を改善させる効果があります。 レーザー治療も、紅斑に対して有効であると知られており、特に鼻に見られる症状が改善するという結果も報告されていますが、薬による治療と比較するとまだ研究段階といえます。
メトロニダゾール、アゼライン酸クリームの外用療法が有効です。メトロニダゾールは、症状を改善させるだけでなく、症状の再発を抑えるための効果もあることが分かりました。アゼライン酸クリームによる治療では、回数による違い(1日1回と1日2回塗布した場合)で効果に差はなく、手間がかかることで患者さん自身による治療の中断を防ぐためには、1日1回の塗布の方が良いといえます。 一部の論文では、アゼライン酸クリームの方がメトロニダゾールよりも副作用が強いものの、効果が得られると報告しています。 現在ではテトラサイクリンやドキシサイクリンも広く使用されていますが、これらの有効性を確実に証明するためには、もう少し研究が必要と考えられています。
データにばらつきがあり、今回の研究では、腫瘤型酒さに対する治療法について優劣を判断することはできませんでした。
目の症状を訴える患者さんは全体の約58%にも上りますが、眼型酒さにおける研究はまだあまり行われていません。今回対象となった論文のうち眼型酒さを扱ったものは2報のみでしたが、人工涙液よりもシクロスポリンを含む点眼薬の方が“QOL(Quality Of Life)=生活の質”を改善する効果が報告されています。
酒さの治療法は多数存在しています。今回ご紹介した論文では、メトロニダゾールやアゼライン酸クリーム外用療法、ドキシサイクリン、テトラサイクリン内服の有効性が証明されています。一方、アジスロマイシン、イソトレチノイン、レーザー治療などによる治療は、広く行われている治療法ではありますが、有効性を証明するには、まだまだ研究が必要な段階にあるようです。
酒さの治療は数多くの方法があり、論文では治療効果測定としては丘疹や膿疱の“数”などの大人ニキビを軸に評価していることが多いようです。そのために赤ら顔に関してはあまり注目されていないように思われます。 お肌に炎症が起きていることには理由があると考えています。 腸内環境、ビタミンA、ビタミンDの欠乏による免疫力の低下や異常 皮膚の免疫力低下 皮膚感染症 皮膚局所の慢性炎症(接触型アレルギー) が組み合わさっていると考えています。 これらを正確に診断していくことが治療への早道だと考えています。