肝斑(かんぱん)は、紫外線に晒された部位における後天性の黒皮症です。 肝斑は、左右対称に色素過剰の斑点が一面または点状に現れます。頬や上唇、顎、額を含む、過度の紫外線に晒された領域はもっともよく肝斑が観られる部分です。しかしながら、肝斑は時々その他の紫外線に晒された部分に現れることもあります。
肝斑(Chloasma)は、時々妊娠中における肝斑の出現を表現するために使われる同義の用語です。Chloasma はギリシャ語のchloazeinに由来し、「緑になること」を意味しています。同様にギリシャ語においてMelasは黒を意味します。色素沈着は見た目上決して緑にならないので、melasma(肝斑)がよりふさわしい用語です。
肝斑の病態生理学は定かではありません。肝斑は男性よりも女性でより頻繁に見受けられ、通常妊娠中や経口避妊薬使用時に発症または悪化し、女性ホルモンの活性との直接的な関係性は明らかになっています。実際、肝斑の半分の罹患者は妊娠中に初めて症状を自覚します。加えて、エストロゲン受容体の発現量は、肝斑の傷害部において上昇しているように思われます。 ホルモンの量が男性における肝斑に役割を担っているかどうかは依然として議論のトピックです。肝斑の病態生理学に関連付けられている他の因子は、光感作性の医薬品や軽度の卵巣または甲状腺の機能障害、ある種の化粧品です。 臨床研究において典型的に肝斑は太陽が最も強い夏に発症し、肝斑の過剰色素沈着は見えなくなるか薄くなる傾向が報告されています。したがって、肝斑の発症における一番重要な要因は、太陽光に晒されることです。紫外線は表皮内のメラノサイトによるメラニン産生の増加に貢献する、インターロイキン1やエンドセリン1、アルファメラノサイト刺激ホルモンやコルチコトロピンの産生の増加を誘発することが知られています。皮膚の皮層に位置している線維芽細胞もまた肝斑の発症に貢献しているかもしれません。その理由として、受容体型チロシンキナーゼであるc-kitやある種の幹細胞因子の過剰発現が肝斑の傷害部において同定されていて、これらはメラニン形成を増加させると信じられています。太陽光を厳格に避けることなしで、本質的に肝斑の治療の成功は見込めません。 肝斑の過度の色素沈着は、通常小麦色から茶色です。青または黒は皮膚における肝斑の罹患者の証拠かもしれません。肝斑の分布は三つのパターンに分けられます。一つ目は、額や頬、鼻、上唇、あごといった顔面の中心に現れるパターンです。二つ目は、単に鼻や頬といった頬骨に関連付けられるパターンです。三つ目は、下顎骨が下顎枝に影響するパターンです。なぜ顔のうちのある特徴的な部分がもっともよく関与するのか不確かですが、この部分における脂肪線の密度や活動が関与しているかもしれないと信じられています。
遺伝的性質は肝斑の発症における重要な因子です。肝斑は男性よりも女性においてかなり多いです。強い太陽光に晒される世界の地域出身の小麦色の皮膚をした人たちは、より肝斑の発症する傾向にあります。 肝斑を罹患している324人の世界中の女性における研究で、48パーセントの方が家族に肝斑の罹患者がいましたと答えました。一卵性双生児は肝斑を発症することが報告されていますが、同様の状況下で兄弟は肝斑を発症しませんでした。
肝斑の他の主な要因は、太陽に晒されることです。紫外線は細胞膜において脂質の過酸化を引き起こし、フリーラジカルの産生の結果に繋がり、それがメラノサイトを刺激し、過度のメラニンを生み出します。超波長の紫外線Aと可視光(320−700ナノメーター)もまたメラノサイトを刺激し、メラニンを産出するので、主に紫外線B(290−320七メートル)をブロックする日焼け止めは不十分です。
ホルモンの影響はある種のひとたちにおいて肝斑の発症を担っています。妊娠性肝斑は産科の患者に多い病気です。妊娠が肝斑に影響する正確なメカニズムは不明です。エストロゲンやプロゲステロン、メラノサイト刺激ホルモンの量は通常妊娠後期の間増加しています。肝斑の未経産の罹患者はエストロゲンやメラノサイト刺激ホルモンの量は増加せず、傷害部におけるエストロゲン受容体の量の増加を示すかもしれません。加えて、エストロゲンやプロゲステロンを含む経口避妊薬や前立腺癌におけるジエチルスチルベストロールによる治療による肝斑の発症が報告されています。 エストロゲンだけを投与された人ではなく、合成プロゲステロンを投与された閉経後の女性が肝斑を発症するという観察は、プロゲステロンが肝斑の発症における主要な役割を演じていることを示しています。 ある研究は対照群と比較した時に肝斑の罹患者において甲状腺病の4倍の増加を発見しました。突然で深刻な感情的なストレスのあとに肝斑を発症した二人の女性のケースレポートは、原因として視床下部によるメラノサイト刺激ホルモンの放出を示しました。 どのホルモンやどんなメカニズムが肝斑の発症に関与しているかは正確には依然としてわかっていません。紫外線の組み合わせと遺伝やホルモンの影響は肝斑の二大原因ですが、光毒性や光アレルギー薬、ある種の化粧品は希少な例において肝斑を引き起こすことが報告されています。
通常、肝斑は採血などの試験はされません。しかし、甲状腺機能が軽度異常(低下)していることは肝斑(特に妊娠や経口避妊薬に関連付けられる)の要因になりうるといくつかの研究は提案しています。そういうことから甲状腺機能の試験をチェックすることを考えることは合理的です。 ウッドランプ試験はたいてい色素沈着が上皮または真皮に局在することを助けます。多くの症例において言及すべき点は、色素沈着は上皮と真皮の両方に見られることです。 肝斑の組織学的な特徴は、メラニンが罹患者の上皮や真皮、最も多いのは表皮と真皮の両方において増加していることです。上皮のメラニンは基底膜や基底膜上の領域におけるケラチノサイトにおいて見受けられます。大部分の場合、メラノサイトの数は増加していませんが、メラノサイトがより広範囲に存在し、より突起を伸ばし、より活発になっています。皮膚のメラニンは、よく小さく膨張した血管の周りに集積するマクロファージ内の表面や真皮の真ん中において見受けられます。炎症は散発的であるか、ありません。
肝斑の成り立ちは色々あると思いますが、基本的には局所の肌のダメージ、そして内因性の参加ストレスが原因ではないかと考えております。 局所のストレスの代表は日焼け、化粧品だと思います。化粧品(日焼止めにも!!)には光線過敏性を引き起こすものが数多くあり、それによるダメージは少なからず大きなものがあると考えられます。 そして妊娠や合成ホルモン剤(ピルや合成プロゲステロン)による酸化ストレスがブーストすることで肝斑が現れるのだと思います。 私たちは肝斑の治療の成功は酸化ストレスのマネージメントと考えています。そのためにはマルチビタミン+抗酸化物質の内服、皮膚にはクルクミンジェルによる抗酸化とアポトーシスが必要不可欠です。言うまでもないかもしれませんが、レーザー治療後は肌には強い酸化ストレスがありますのでケアは欠かせません!