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乾癬を患う患者さんの中には牛乳を飲んだり、乳製品を食べたりすることにより症状が悪化することから、乳製品の摂取と乾癬の症状の悪化に関連性があるのではないかと言われてきました。実際に乾癬の治療について書かれた本の中には乳製品が乾癬の治療に有害となる場合があり、そういった事象が見られた乾癬患者さんは全ての乳製品を口にしないように、と注意を促しています。乾癬治療の名医として知られるUCLAのヘン教授は乾癬患者さんに対する教育の中で乳製品の摂取に関しては口酸っぱく注意することで有名です。
乳製品と乾癬の関連を考える上で重要なことは慢性炎症です。
乾癬とは皮膚に慢性的な炎症を引き起こす病気として知られています。現在のところ、乾癬に対する根本的な治療法はないとされています。つまり、ある1人の患者さんにとって、乾癬の症状が好転する治療が、他の全ての患者さんに当てはまるわけではないため、乾癬の症状が改善するかどうかは試してみないとわからないというのが実情です。ただ全ての病気が薬を飲んで解決するわけではないのと同じように乾癬という病気もお食事を始めとしてライフスタイルを見直す必要があります。例えば糖尿病の患者さんが甘いものを食べるのを制限したり、運動したりするのと同じように乾癬の患者さんも食事に注意する必要があるということです。
乾癬に対する食事療法も同様で、乾癬患者さんの中には乳製品を摂取しても問題ない方もいる一方で、乳製品を摂取することにより症状が悪化する方もいらっしゃいます。乾癬の患者さんは、炎症を誘発する可能性のある食生活を見直し、医学的根拠のある抗炎症性の食生活へと改めることにより乾癬の症状がコントロールしやすくなることは私たちの経験上よく知っています。
乳製品は乳糖分解酵素を持つ一部の人には腸内環境を整えることによって慢性炎症を押させる作用があります。事実、食品科学や栄養に関わる論文に掲載された総説では、乳製品は一般的に炎症誘発性よりむしろ抗炎症性であることが結論として記載されています。
その一方で乳糖分解酵素を持たない人や働きの悪い人にとっては乳製品には炎症を促進させる作用があるのではないかと言われています。個々の臨床試験では乳製品が炎症誘発性を持つことも証明されています。
そのため複数の臨床試験で「乳製品は炎症誘発性」とするもの、また全く反対に「乳製品は抗炎症性」とするものが存在しています。また、一部の乾癬患者さんにとって乳製品は乾癬の症状悪化につながり、その他の乾癬患者さんにとっては決められた量の乳製品を摂取している限り特に問題が起こらないという結果も出ています。
人によって乳製品で炎症マーカーが下がる場合もあれば、例えば牛乳アレルギーや乳製品アレルギー、乳糖不耐症を持っている場合には、炎症が誘発される大きな原因になります。その理由の1つとして、人間はカラダの作りが全く同じではないという点が挙げられます。乾癬患者さんで症状を軽減する食事療法をしている方の多くは、乳製品と乾癬の悪化に関連性があると心配しています。乳製品が乾癬の症状に悪影響を与えるか与えないかは簡単に答えが見つらないことが多いようです。そのため経験のある医師の指導の下で食事指導を実践することによって乳糖不耐症があるか否かをチェックすることが出来ます。言うまでもなく、乳製品に対してアレルギーが出る方は乳製品を摂取すべきではありませんが、不耐症のある人においても基本的には乳製品を摂取すべきではありません。 しかし、乳糖不耐症がある場合でも許容量が人によっては異なりますので、少量の摂取では問題のない人もいれば全く摂取しない方が良い方もいます。
もしご自身の乾癬の症状の悪化と乳製品が関連していると思われる場合は、乳製品を摂らない食生活に変えて症状が改善するかどうかを試してみて下さい。ただし、食事療法を始める前に経験のある医師または栄養士に必ず相談してください。
もし、乳製品への不耐症ではなく、乳製品アレルギーであると思う場合は、医師にアレルギー検査を依頼することによってはっきりします。
乳製品を食べても問題がない場合は、低脂肪または無脂肪の牛乳、スキムミルク、無塩バター、カッテージチーズ、プレーンヨーグルトまたは低脂肪、無脂肪ヨーグルト等を選んで食べるようにして下さい。
牛乳に関しては、豆乳やアーモンドミルク等、豆類から製造されるミルクを牛乳の代わりに飲むことも良いでしょう。
乳製品フリー食事療法を実施する場合は全ての乳製品を摂らないようにして下さい。つまり、牛乳、チーズ、バター、ヨーグルト、クリーム、アイスクリームなどの全てを含みます。また、パッケージ食品は乳製品を使用していることが多いので、栄養成分が記載されているラベルをよく読むようにして下さい。
乾癬の患者さんが乳製品を摂取しない食事療法を実施する場合、牛乳や乳製品の代替品にも問題がある可能性に注意する必要があります。例えば、乾癬患者さんの中にはグルテン不耐症である方も多く、穀物ベースの牛乳代替品は選択肢となりえません。乾癬の患者さんにとっては豆も症状を悪化させる可能性が高いことが指摘されており、それが事実であれば、乾癬の患者さんは大豆などの豆から作られた豆乳だけでなく、豆ベースのヨーグルトも控える必要があります。
お肌やカラダのコンディションが表面的に問題ない場合や病気に罹っていない場合でも、乳製品は、多くの人々にとって、特に乳糖不耐症の方には、次のようなことが問題となり健康問題を引き起こす可能性があります。
1)乳製品を適切に消化するための酵素が不足している乳糖不耐症の方や、乳製品アレルギーのある方は腸での消化不良が起こることがあります。
2)多くの乳製品に含まれる飽和脂肪の多い食品は、多くの健康問題を引き起こします。
3)多くの酪農家、酪農業者が感染の予防や治療として使用している化学物質は、乳牛に影響を与え、その牛乳を通して、人に多くの健康問題を引き起こします。
UCLAヘン教授は乳製品を取り除いた食事とクルクミンジェルを用いた治療法で3か月間で70%近い治療成績を誇っていらっしゃいます。そのため、基本的に私たちは乾癬の患者さんにおいては乳製品アレルギーを持っていない場合でも、全乳を使用した乳製品、脂肪、糖分、塩分の含有量が高い乳製品、マーガリン、ホイップクリームは避けた方が良いとアドバイスをしています。
そして乾癬のもう一つ大事な要件である皮膚感染症(マイクロバイオータ)も含めて治療を行っています。
参考文献:
http://www.healwithfood.org/psoriasis/dairy-free-diet.php