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乾癬により発がん率が上昇、生物製剤の影響はほぼない
最近の研究によると、5年に渡る発がん率は乾癬を患っている患者さんにおいて通常の健常者よりも高いが、生物製剤による影響はほとんど受けていないことがわかりました。
研究者らは乾癬を患う患者さんのリンパ腫および非黒色腫皮膚がんのがん診断率と健常者の診断率を別々に比較し、さらに非黒色腫皮膚がんを除くすべての癌に対してがん診断率を調査しました。米国皮膚科学会で発表されたこの研究結果は、乾癬患者さんが3つのカテゴリーすべてにおいて高い発がん率を示しました。ただし、乾癬患者さんには通常より高いがん発症におけるリスクがあるものの、ものすごく高いリスクではないとしています。この研究では乾癬の治療法別に発がん率も調査しましたが、特定の治療法における発がん率の上昇は認められませんでした。
以前の研究では、特定の治療、特に腫瘍壊死因子-α(TNF-α)阻害剤の使用によるリンパ腫および非黒色腫皮膚がんの発がんリスクが高いと報告されたため、今回の研究は特にこの2つのがんに焦点をおいて実施されました。TNF-αは乾癬をはじめとする炎症に関与するサイトカインであり、ヒュミラ(アダリムマブ)、エンブレル(エタネルセプト)およびレミケード(インフリキシマブ)などの生物製剤は、TNF-αを阻害することによって作用する機序を持っています。
治療法別に分析されたがん診断率は、非黒色腫皮膚がんを除くすべての癌についてほぼ同じでしたが、非黒色腫皮膚がんおよびリンパ腫についてはわずかに差異がありました。分析した治療法は、生物製剤、非生物製剤および光線療法の3種類です。診断率は患者10,000人の観察人年数(PYO)で算出しています。患者さんについて研究した各年が1PYOとして数えられます。この登録簿は、約7,930万人の情報を提供しており、乾癬患者数は1,800万人を超えます。
リンパ腫では、発生率は10,000 PYOあたり11.1であったのに対し、健常者は6.6という結果となりました。非黒色腫皮膚がんも、発生率が乾癬患者さんでは、147.2のところ、健常者では94.2となりました。非黒色腫皮膚がんを除くすべての癌の発生率においては、健常者の96に対して、乾癬患者さんは115.5となりました。この結果から、乾癬患者さんは定期的にがん検診を受診することが推奨されます。
主治医と相談して乾癬の症状のコントロールとリスク要因について上手にケアする必要があります。もし乾癬または乾癬治療ががんのリスクを高めていると感じた場合には皮膚科専門医に相談してみてください。
最近の研究によると、乾癬を患う患者さんは、乾癬にかかっていない人と比較して、肺癌、リンパ腫および非黒色腫皮膚癌のようながんを発症する危険性がより高いと指摘しています。この結果は、がんを乾癬の合併症または併発する症状として特定した以前の研究の結果と同じであることが判明しました。ただし、研究はいまだ発がんリスクが乾癬そのものからくるのか、それとも乾癬治療に影響を受けた免疫システムが原因となるのか、解明しているところです。
複数の研究結果によるとある治療法によっては発がんのリスクを高める危険性があると報告されています。しかし、乾癬の症状である慢性炎症も腫瘍の成長を促進すると言われています。乾癬の治療を受けることにより炎症は治まりますが、患者さんは治療により新たな病気が発症するのではないかと心配されています。
イギリスの大規模な医療記録データベースの記録を使用して、がんリスクを分析したところ、乾癬患者さんのうち186,076名が軽度の乾癬に分類され、12,290名は中度から重度の乾癬と分類されました。この研究には、乾癬を患っていない937,716名と乾癬を患っている198,366名が含まれています。
すべてのがんを組み合わせてみると、悪性腫瘍のリスクは全体的に見れば低いという結果が出ています。非黒色腫皮膚癌を除くすべての癌を含む分析において、乾癬患者さんは、乾癬を患っていない人と比較してがんを発症するリスクが約6%増加しました。但し、乳がん、大腸がん、前立腺がん、黒色腫などの有名ながんのリスクが増加していないと指摘しています。
しかし、乾癬患者さんは、リンパ腫、肺癌および非黒色腫皮膚癌を含む特定のがんにおいて発がんリスクが高いことが判明しました。
研究結果によると、乾癬患者さんのリンパ腫発症リスクは34%増加しました。これがどの程度のリスクかというと、一生のうちでアメリカ人の約0.2%がホジキンリンパ腫、約2.1%が非ホジキンリンパ腫と診断されることになります。
この研究対象だった乾癬患者さんは、肺癌を発症するリスクが15%増加しました。しかし、このリスクは、喫煙していない患者さんにおいてはそれほど高くありませんでした。アメリカ人の約6.6%が一生のうちで肺癌や気管支癌を発症するという結果となっています。
米国皮膚科学会によると、非黒色腫皮膚癌はアメリカで最も一般的な癌であり、この研究対象だった乾癬患者さんは、非黒色腫皮膚癌を発症するリスクが12%増加していることが明らかになりました。
リンパ腫、肺癌および非黒色腫皮膚癌について、中度〜重度の乾癬を有する患者さんでは特にリスクが高いという結果が出ました。しかし、必ずしもより重度の疾患が発がんリスクを高めることを意味するとは限らないとしています。
この研究は処方された治療法に基づいて患者さんの疾患の重症度を分類しています。メトトレキセート、光線療法、アシトレチンまたは生物製剤のような全身治療薬の投与を受けている患者さんは、中度から重度の乾癬を有すると分類され、こういった治療を受けていない患者さんは、軽度の乾癬を有すると分類されています。この分類方法は、疾患の重篤度または治療ががん発症リスクの上昇に関与しているかどうかを正確に把握するのは難しいことを意味しています。
メトトレキセート、ネオラル、サンドイムンなどの重度の乾癬を治療するために使用される治療薬は、免疫系を抑制する効果があるため、癌および感染のリスクを高める危険性があります。しかし、免疫抑制薬メトトレキセートを用いて治療をしているか否かに関わらず、乾癬患者さんにおいてリンパ腫を発症するリスクが同じであると指摘しています。
免疫抑制薬を服用している多くの患者さんは、がんのリスクが高いことを知っていて、それでも、こういった患者さんは症状をコントロールするためにリスクを冒しています。重度の乾癬を患う患者さんは乾癬が身体の大部分を覆っている状態であり、時には手足を使用できない程の症状の場合もあります。がんの発症リスクがあるとわかっていても、余りに症状が酷いためこういった治療薬を使用するしかない状況です。
乾癬は全身的な慢性炎症と皮膚感染が密接にかかり合った疾患です。慢性炎症は腸内環境の悪化(乳糖不耐症、グルテン不耐症)や喫煙、はたまたビタミンDの低下などが良くある原因となっています。皮膚感染は皮膚の局所にも、全身にも炎症を引き起こすことが知られています。治療を効率的に行うために必要なのは原因を断ち、自然治癒力を高める治療です。
当院では原因を特定しライフスタイルを変えて、適切な抗生剤、クルクミンジェルを用いることにより高い治癒率を誇っています。
参考文献
https://www.psoriasis.org/advance/new-study-points-toward-increased-risk-some-cancers-people-psoriasis-1
http://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/news/20031117/psoriasis-may-increase-cancer-risk#2
https://www.psoriasis.org/advance/cancer-rates-rise-with-psoriasis-biologics-have-little-effect