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乾癬性関節炎を患う肥満の患者さんは、治療と併せて減量を行うことにより、乾癬性関節炎の症状緩和に効果があります。
乾癬性関節炎とは、乾癬を患う患者さんに、痛くなったり、腫れたりする症状が関節に見られる関節炎の一種で、自己免疫性疾患と考えられています。米国ユタ州で2002年から2008年にかけて行われた943名の乾癬患者を対象とした研究では26.5%が乾癬性関節炎を患っていました。
米国ユタ州で行われた研究では、乾癬性関節炎の予測因子として1)18歳時点のBMI(Body mass index)、2)乾癬を発症した年齢、3)女性、4)乾癬の皮膚症状が出ている皮膚の面積の広さ、を挙げています。
若年層の肥満は乾癬性関節炎のリスクが増すと危惧されており、米国ユタ州で行われた研究で、乾癬性関節炎の発症年齢が最も早いのは、過体重または肥満の患者さんでした。乾癬性関節炎の発症年齢が普通体重の患者さんで平均48歳であることに比べ、満18歳時点で肥満だった人のうち20%が35歳までに乾癬性関節炎の症状が現れたというデータが示されています。
乾癬性関節炎を患う子供は肥満のリスクが非常に高く、9カ国、409名の乾癬性関節炎を患う小児患者を対象とした研究によると、うち40%は肥満であり、特に米国出身の子供のうち34%がBMIで肥満とされる結果が出ています。また、米国においては重症度の高い乾癬性関節炎を患う子供の方が肥満体型でした。
サイトカインやタンパク質のような炎症を促進する腫瘍壊死因子TNF-αに作用する治療薬(TNF-α阻害薬)の服用を開始した138名の患者さんを対象とした最近の研究が、海外で権威をもつ医学誌に掲載されました。専門家によると乾癬性関節炎を患い、かつ肥満体型の患者さんでは、炎症が2倍ひどくなると言われています。
肥満体型の患者さんがTNF-α阻害薬を内服しても、脂肪細胞はサイトカインのようなTNF-αを分泌するため、肥満が薬の効用を妨げるのではないかという結論が出ています。
肥満体型の患者さんに対してTNF-α阻害薬の内服だけではなく、治療に減量も取り入れることにより治療の効果が変わるかを調べた研究があります。この研究では、エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、レミケード(インフリキシマブ)の3つの治療薬を使用し、BMI 25以上の過体重もしくは肥満体型の患者さん138名(うち、6ヶ月間の全行程を終了した患者さんは126名)を対象としています。半数の患者さんは1日に1500カロリー以内を目安とする低カロリーダイエットを実践し、残り半数の患者さんは栄養ガイドラインについてのアドバイスを受けました。患者さんは月に1回経過観察を受け、研究の最後に治療の成功を示す「最小疾患行動(MDA)」に達成したかどうかを評価する最終評価を受けました。評価指標は関節腫脹や圧痛のある関節の数、痛みの程度、皮膚疾患の重症度等、多岐に渡り、全ての評価指標を総合的に勘案し症状の改善度を評価しました。研究の最終ステージにおいて、MDAを達成したのは、低カロリーダイエットを実践した群では43%、栄養アドバイスを受けた群では35%でした。
低カロリーダイエット自体が治療に良い影響をもたらしたというよりも、実際に治療に効果を与えたのは体重減少でした。研究によるとMDAを達成したのは、5-10%程度の減量に成功した患者さんの45%、そして10%以上の減量に成功した患者さんの約60%でした。この減量した患者さんは、低カロリーダイエットを実践した患者さんとそうでない患者さんの両方が含まれます。この結果から、体重減少が、肥満でTNF-α阻害薬を内服する患者さんの治療の効果を最も左右すると言えます。
治療薬を内服しているだけの患者さんより、治療薬を内服しながら減量もした患者さんの方が、乾癬性関節炎の症状がより改善したという結果が出ています。また、減量することで、乾癬性関節炎の重症度が軽減することも証明されています。
ノースウエスタン大学皮膚科長は小児の乾癬性関節炎患者さんは、皮膚疾患自体の治療ばかりに気を取られるべきではなく、成人患者と同じく肥満により引き起こされる代謝の問題であることを認識すべきという意見を述べています。また同様に、医療従事者は子供に乾癬の症状が出た場合には早急に治療を開始し、特に肥満型の小児患者の場合は医療従事者、家族が一丸となって健康的なダイエットや運動する習慣を身につけるような治療法を確立することが重要であるとしています。
今回は、乾癬性関節炎にかかりやすいであろうと思われる患者さんの多くは、不可逆的な関節破壊に至る前の早期発見及び治療のため、より頻繁で詳細なスクリーニングを受けることにより恩恵を受けるであろうというコンセプトを支持する研究結果をご紹介しました。
【渋谷セントラルクリニックDrコメント】
肥満があるとTNF-αなどの炎症性サイトカインの発生量が倍になるという研究結果をご紹介しました。こうした炎症性サイトカインはインスリン抵抗性を引き起こすので肥満や生活習慣病の発生が起きやすくなるはずです。当院ではダイエットプログラムを行っています。ビタミンDや亜鉛、メトホルミンなどの服薬やサプリメント、栄養指導を通じて減量や乾癬の根本的な治療を行っています。
参考文献:
https://www.psoriasis.org/advance/weight-loss-with-treatment-can-help-psoriatic-arthritis
https://www.psoriasis.org/media/press-releases/children-psoriasis-more-likely-be-obese