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酒さとステロイド

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ステロイドによって引き起こされる酒さ様皮膚炎・ステロイド酒さを知る。

ステロイドとステロイドホルモンの違い

体内で作られているホルモンの1つにステロイドホルモンというホルモンがあります。このホルモンは、免疫系に作用して、炎症を強力に抑える効果があります。ステロイドという薬は、このホルモンと似た構造をしている成分から作られる薬です。ステロイドは、ステロイドホルモンと同じような働きを担うことで炎症を抑え、関節リウマチや狼瘡(ろうそう:皮膚に狼に噛まれた痕のような赤みや皮疹、潰瘍などが見られる状態)、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患など、さまざまな病気に対する治療薬となっています。

ステロイドの不適切な使用による問題

ステロイドは1951年に初めて使用されて以来、皮膚の病変に対しても広く使用されています。しかしステロイドの不適切な使用や、ステロイドの長期間にわたる使用によって、酒さのような症状が現れ、酒さのような皮膚の病変が確認されるようになりました。赤ら顔やニキビ様の皮疹の原因として、ステロイドのもつ血管拡張作用や炎症性サイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質で、炎症を誘発しやすくする物質)の増加が考えられています。

「酒さ様皮膚炎」・「ステロイド酒さ」とは?

ステロイドによって生じる酒さのような病変は「酒さ様皮膚炎」あるいは「ステロイド酒さ」と呼ばれており、長期間ステロイドを使用していた部位、たとえば顔の中心部や口の周囲、目の周囲などに炎症性の丘疹(盛り上がった皮疹)や膿瘍(膿の詰まった皮疹)が生じることを特徴とします。皮疹の他に、赤みやほてりが生じたり、皮膚が変化して鱗のようにガサガサしたりしてしまうこともあります。そして、この酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)を治療せずに放置すると、なかなか治らない皮膚の萎縮(皮膚が薄くなる)や毛細血管の拡張へと進展してしまいます。

治療にはまず、ステロイドの中止が必要不可欠です。これに加え、抗菌薬(テトラサイクリンまたはマクロライド)の内服と非ステロイド性(ステロイドの成分を含んでいない)の外用薬を使用します。症状が改善するまでには数ヶ月はかかるといわれています。

ステロイドと酒さ様皮膚炎の実際

ステロイドの使用によって酒さのような皮膚病変が生じた18歳~60歳の75名の患者さん(男性13名、女性62名)を対象に、皮膚に生じた副作用を調査した研究では、90%以上の患者さんが顔の赤みとほてりに苦しんでおり、97%の患者さんに熱感やかゆみの訴えがありました。毛細血管拡張は75%以上の患者さんに見られ、40%の患者さんに丘疹膿疱型酒さのようなニキビ様の皮疹やしこりが見られました。患者さんがステロイドを使っていた期間は、3ヶ月~10年で、症状の誘因としてストレスや熱、日光などによる刺激が報告されています。

ステロイドの不適切な使用による副作用

ステロイドの不適切な使用による副作用と、その副作用に対する治療の効果を調査し評価している別の研究をご紹介します。

調査対象は、2007年6月から2008年11月までに、酒さ様皮膚炎のために外来を受診した200名の患者さん(男性56名、女性144名)で、ステロイドを平均19.76ヶ月(1ヶ月~20年間)使用していました。副作用として、ステロイド長期服用の典型的な症状である顔面の紅斑はほとんどの患者さんに見られ、その他、リバウンド症状(ステロイドを中断すると一時的に症状が悪化する)、毛細血管拡張、乾皮症(乾燥肌)、ほてり、色素沈着、光線過敏症などの副作用も半数近い患者さんに見られました。そして、これらの副作用はステロイドの使用期間が長いほど、あるいは効果が強力なステロイドであるほど、症状が出やすいことが分かりました。

ステロイドの使用頻度と入手方法

この研究調査では、ステロイドの使用頻度は、1日2回が22%、1日1回が60%、1日おきが10%、週2回が8%でした。ステロイドを医師から処方されたのは、31%(63名)(うち皮膚科医から処方されたのは19%)、薬剤師から処方されたのは、25.5%(51名)でした。この他、親せきや友人から勧められた、あるいは自己判断で使用した患者さんが50%(120名)でした。

ステロイドの不適切な使用による副作用に対する治療

この研究では、ステロイドによる副作用に対して、酒さを悪化させるといわれているリスク因子(カフェイン、刺激物、熱い飲み物、アルコール、フッ素を含む歯磨き粉や薬品)は避けるよう指示した上で、下記の治療を行い、治療効果を得られています。

軽度の患者さんにはタクロリムスの外用を行ったところ、4週間以内に改善しました。また、重症の患者さんにはタクロリムスの外用を2〜3ヶ月間(1日2回)に加え、アジスロマイシン(500mg)を1週間に3錠、4~6週間の内服、またはドキシサイクリン(100mg)を1日2回、4~6週間の内服を続けることで改善しました。また、エモリエント(保湿クリーム)の外用、アミカシンやビタミンC、Eの内服は、皮膚萎縮や毛細血管拡張の症状を抑える効果がありました。

酒さ様皮膚炎にならないように気をつけること

大量のステロイド、あるいは長期間にわたってステロイドを顔に使用すると、酒さのような皮膚病変が現れます。酒さ様皮膚炎は単なる医学的な問題に留まらず、社会的な問題でもあるといえます。患者さんは脂漏性皮膚炎などの比較的軽症な皮膚病変に対してもステロイドを使用しており、そのきっかけは友人や親せきの勧めや、自己判断の場合も珍しくありません。ステロイドは使い方によって治療薬にも、酒さ様皮膚炎を引き起こすものにもなり得ます。経験のある医師の元、使用方法をきちんと守って使用するようにしましょう。

ステロイドが悪さをする機序は?

ステロイドによる抗炎症作用は、はじめのうちは皮膚の病変に効いているように見えますが、数ヶ月後には皮膚萎縮などの変化を招き、最終的には酒さのような症状を示すようになります。そうなると、細菌やウイルス、真菌などの病原体に対する免疫力が弱くなり、容易に感染しやすい状態になってしまいます。ステロイドの長期間の使用、あるいは不適切な使用は、ステロイドへの依存だけでなく、皮膚を薄くしてしまうのです。このような副作用が生じるまでには、平均6ヶ月かそれ以上と考えられていますが、期間は人によって異なり、また用いるステロイドの強さによっても異なります。

使っているステロイドを急に止めても大丈夫なの?

薬は急に中止してしまうと症状が悪くなるものですが、ステロイドのように、もともと体内で作られているホルモンに似た構造をしている場合、薬に依存して、体内で作られるホルモン量が低下してしまいます。その結果、ステロイドを急にやめると、体内で十分な量のステロイドホルモンが作られていないことも影響して、治療前の状態よりもさらに悪くなってしまうことがあり、この状態をリバウンドといいます。酒さ様皮膚炎を治療するためには、ステロイドの中止は必要不可欠ですが、急にパタッとやめてしまうのではなく、使用する回数を徐々に減らしていく必要がある場合があります。

酒さ様皮膚炎を治すには

今回ご紹介した研究では、酒さを悪化させるといわれているリスク因子(カフェイン、刺激物、熱い飲み物、アルコール、フッ素を含む歯磨き粉や薬品)は避けた上で、軽症ではタクロリムスの外用のみで、重症例に対しては抗菌薬の内服とタクロリムスの外用で十分な治療効果が得られるとしています。タクロクリムスは免疫を抑制する効果と炎症を抑える働きがありますが、ステロイドとは対照的に血管拡張や萎縮は起こしません。

【渋谷セントラルクリニックDrコメント】

治療方法は確立されたものがまだありません。

当院では可能な限りナチュラルな方法で根本的な治療で酒さに伴う赤ら顔や大人ニキビを治療しております。例えば、クルクミンジェルを用いたナチュラルな抗炎症治療や炎症の発言を減らすためのライフスタイル指導をしながらに治療を行っています。

【参考出典】

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3088930/

https://www.rosacea.org/weblog/great-impostor-steroid-induced-rosacea

http://kanahifu.umin.jp/story/story-03.html(神奈川県皮膚科医会)

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