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胸郭出口症候群・難治性肩こり


胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome)は、腕神経叢と鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨などや前斜角筋、中斜角筋、小胸筋などに圧迫・牽引されることで起きる症状の総称である。

胸郭出口症候群は、様々な原因によって通り道を狭め、血管、神経を圧迫することによって肩こり、腕のしびれ、冷えなどの血行不良を引き起こします。
ひどい場合ではしびれが後頭部、耳、口と言ったところに発生したり、耳鳴り、ふらつき感を感じることもであります。

胸郭出口症候群は特に、「なで肩体系」の女性に多いとされていますが、格闘技などで斜角筋、小胸筋を重点的に鍛えている方にも見られる症状です。

症状 首肩こり、腕から手にかけてのしびれ、腕のだるさなどがあげられる。

具体的にはつり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で上肢のしびれや肩や腕、肩甲骨周囲の痛みが生じます。
前腕と手の小指側に沿ってうずいたり、刺したりするような痛み、しびれ感、ビリビリ感などを感じることがある。また手の握力低下と細かい動作がしにくいなどの症状が現れることもあります。

分類

胸郭出口症候群には、以下のように分類される。
斜角筋症候群:前斜角筋、中斜角筋、第一肋骨の3つで出来ている三角形の隙間を「斜角筋間隙(しゃかくきんかんげき)と呼びます。この斜角筋隙を腕神経叢(わんしんけいそう)という神経の束と、鎖骨下動脈という動脈が走っており斜角筋隙に挟まれると手に痺れが発症します。
過外転症候群(小胸筋症候群):過外転とは腕を外転したときのことを言い、過外転をすると肩甲骨の鳥口突起と小胸筋に挟まれ圧迫されて症状が発生すること過外転症候群と言います。小胸筋からの圧迫を受けるのは前述の腕神経叢と言う部分で、神経の束、動脈が圧迫されて障害が発生するという事です。
第一肋骨症候群
頚肋症候群
肋鎖症候群
型としては以下のようなものに分けられる。

神経型
90%以上で鎖骨上と前胸壁に灼熱痛を感じたり、尺骨神経領域に局所痛と感覚異常が出る。鎖骨の圧痛、腕神経叢引っ張りテスト陽性。手の内在筋衰弱、母指球筋または小指球筋のしびれ、むちうち症の病歴、キーボード・ファイリング(反復的上肢運動)、持ち上げ作業(頭上挙上運動)の病歴がある患者に多い。

静脈型
第一肋骨、前斜角筋、鎖骨、肋烏口靱帯による鎖骨下動脈外部圧迫が伴われる。上肢反復運動、鎖骨骨折の病歴があり、局所の静脈造影が必要となる。
鎖骨下静脈が圧迫されると、手・腕は静脈血のもどりが悪くなり青紫色になります。

動脈型
前斜角筋、中斜角筋間の鎖骨下動脈の圧迫が伴われる。鎖骨下動脈瘤を引き起こすことが多く、アテローム塞栓による指の虚血が伴われる。
鎖骨下動脈が圧迫されると、上肢の血行が悪くなって腕は白っぽくなり、痛みが生じます。
その他の疾患によって2次的に生じるもの
斜筋が緊張する原因は、これまで述べてきたように骨格、筋肉以外の原因でも生じる可能性があります。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは名前の通り胃液が食道、口腔まで逆流しやすくなり、炎症を起こしてしまう病気です。逆流が頻繁に生じると胸焼けだけではなく、喉頭部に炎症を起こすこともあります。こうした胃液の逆流によって、斜角筋に緊張することもあります。

検査

単純X線撮影
MRI
 3分間上肢挙上負荷テスト – 両上肢を外転外旋した状態で挙上させ、指の屈伸を3分間ほど繰り返させる。患側にしびれが生じた場合は陽性。
Wrightテスト – 両上肢を外転外旋させて挙上させ、橈骨動脈の脈を触診する。患側の脈が落ちれば陽性。
Morleyテスト – 鎖骨上窩の腕神経叢を指で圧迫し、圧痛が生じれば陽性と判断。

治療

基本的には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の痛み止めは症状の軽減には役立ちますが、痛みを取り除くことは出来ません。
当院ではリハビリ及びIMSを中心に治療を行っています。

胸郭出口症候群は腕神経叢に対して、いかり肩では圧迫力が強くなり、なで肩では牽引力が強くなり腕神経叢を絞扼してしまいます。解剖学的な絞扼部位と姿勢が悪いことが密接に関与しています。
リハビリでは上肢やつけ根の肩甲帯を吊り上げている僧帽筋や肩甲挙筋の強化運動訓練(※)を行うだけではなく、姿勢をきれいに保つ必要があります。当院では加圧ピラティスによって効率的なリハビリを行っています。

※僧帽筋に拮抗している小胸筋・僧帽筋(下部)の緊張をとることにより僧帽筋の緊張が取れることもあります。そのため鎖骨や肩甲骨の可動性の評価や小胸筋のストレッチも重要になります。
ただ何といっても重要なのは僧帽筋や菱形筋群の筋力トレーニングです。
筋力不足で肩甲骨を内転位に保持できず外転してしまうと、上肢の重量により、肩甲骨には下方回旋方向への力が加わるので、肩甲骨は外転・下方回旋(なで肩)になります。
肩甲骨を内転位に保持する菱形筋群の筋力トレーニングが必要です。

IMS(鍼治療)を行う場合は斜角筋、胸鎖乳突筋などの複数の筋肉にアプローチして治療を行います。基本的には筋肉の緊張を緩めて、腕神経叢への圧迫を軽減することが目的です。
鎖骨に近ければ近いほど気胸のリスクが高まりますし、内出血による血腫の可能性もありますから医師による治療が望ましいことは言うまでもありません。

ビタミンDの不足、貯蔵鉄の不足、甲状腺機能低下症も症状の悪化に関与している可能性があります。

予防

予防と保存療法が大切です。
症状を悪化させる上肢を挙上した位置での仕事や、重量物を持ち上げるような運動や労働、リュックサックで重いものを担ぐようなことを避けさせます。

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