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先月はスイス(ジュネーブ)にて米国アンチエイジング学会(A4M)が初めて開催した長寿サミットに参加してきました。この通信でも取り上げております健康長寿医学(Longevity Medicine)の決定版ともいえる内容で非常に大きな感銘を受けました。今月は未来医療について歴史も踏まえて簡単にまとめてみたいと思います。

「老化=自然に進むもの」というイメージは根強いですが、最先端医学では “老化を治療する”というプロセスが見えつつあります。
従来のアンチエイジング(Anti-aging)は、
・老化の速度を遅らせる
・老化による症状を抑える
ものでしたが、老化細胞(ゾンビ細胞) の発見が、この流れを大きく変えました。細胞は通常、傷つくと「修復」か「死(アポトーシス)」を選びます。ところが第三の状態として、“死なずに止まり、炎症を起こし続ける細胞=老化細胞(ゾンビ細胞)”があることがわかってきました。
ゾンビ細胞が増えれば増えるほどエイジング現象は強くなり、
・肌のくすみ
・血管の硬化
・免疫力の低下
・頭の回転が鈍る(ブレインフォグ)
など、“老化の火種”が全身に現れるようになります。
つまり老化とは 年齢の問題ではなく“老化細胞の蓄積” の問題なのです。
若いうちは免疫によってゾンビ細胞は片づけられるのですが、加齢とともに “免疫そのものが老化する” ために免疫力が下がり、ゾンビ細胞が生き残ってしまうことがわかってきました。
そこで注目された臓器が胸腺です。
胸腺は、免疫細胞(T細胞)を教育する“学校”のような臓器ですが、思春期を過ぎると急速に萎縮します。そのことによって
・新しい免疫細胞(T細胞)がつくられない
・がん細胞・老化細胞・ウイルスを見逃す
・慢性炎症が加速する(inflammaging)
※ちなみに牛の胸腺はフランス料理でリードヴォーとか、焼肉でシビレとか呼ばれていますね!

2015~2017年に行われた TRIIM 試験で、人間の生物学的年齢が戻るという歴史的な結果が発表されました。成長ホルモン、DHEA、メトホルミンの投与という、比較的シンプルな組み合わせで、下記のような結果が現れたのです。
・MRIで胸腺組織が再生
・新しい免疫細胞(T細胞)が生まれる
・炎症が低下
・エピジェネティック年齢が平均2.5歳若返り
胸腺が再生することはまさに、「老化そのものを巻き戻す医学」の始まりとなったわけです。
胸腺の再生によって免疫が「掃除力」を取り戻すと、次に重要になるのが、老化細胞そのものをどう減らすかという段階です。
これが、近年急速に研究が進んでいるセノセラピー(Seno-therapeutics)=老化細胞を標的にする医療です。セノセラピーは大きく3つのアプローチに分類されます。胸腺で免疫の掃除力が戻ると、次に重要になるのが 老化細胞そのものを減らす治療(セノセラピー) です。
1.老化細胞を「選択的に死滅させる」アプローチ
セノリティクスは分子標的薬(抗がん剤の一部)、ポリフェノール・植物由来成分やペプチドを老化細胞だけに作用させてアポトーシス(細胞死)に導く治療概念です。
2.老化細胞を「黙らせる・毒性を弱くする」アプローチ
老化細胞が出す炎症物質(SASP:IL-6, TNF-αなど)は周囲の細胞を老化させる“悪循環”を作ります。セノモルフィックスは、老化細胞を殺すのではなく、悪影響を弱める方法。
代表例:
・メトホルミン
→ AMPK活性化・ミトコンドリア安定・SASP抑制
・クルクミン
→ NF-κB・TNF-αの抑制(自然由来で安全性が高い)
・レスベラトロール・フィセチン
→ 抗炎症・抗酸化シグナル改善
現在の渋谷セントラルクリニックで多く用いている方法で、老化細胞を安全に「静かにさせる」アプローチで、体質改善や炎症体質の方に適した領域といえます。
3.免疫に「本来の掃除機能」を取り戻させるアプローチ
先ほど取り上げたお話です。若いときには免疫細胞(T細胞・NK細胞)が老化細胞を自然に除去します。しかし免疫老化が進むと「見つける力・殺す力」が衰え、老化細胞が残り続けてしまいます。
免疫誘導アプローチでは:
・胸腺再生(TRIIM)で“新しい免疫細胞”を作る
・NK細胞の機能を高める介入
・免疫チェックポイントの調整(研究領域)
などによって体が本来持っている“老化細胞の処理能力”を復活させるという考え方です。
こちらも渋谷セントラルクリニックでは重視しているアプローチです。

ここ数年でわかってきた大きなポイントは、
細胞を若返らせる前に、細胞が生きる環境を整える必要があるということ。
血液中に炎症物質・老廃物・酸化脂質などが多い状態では、どんな治療も本来の効果を発揮しにくくなります。そのため、海外では以下のような“環境づくり治療”が実験的に始まっています。
●血液オゾン浄化:炎症物質や老廃物を除去する“血液の大掃除”
● HBOT(高気圧酸素療法):幹細胞動員やミトコンドリア活性を促す
●プラズマフェレーシス(血漿交換):老化関連物質を減らすための透析による“全身リセット”
※こうした細胞の環境の状況は、渋谷セントラルクリニックのアンチエイジング検査とエピクロック検査で明らかにすることができます。
上記のプロセスによって免疫が若返り、内部環境が整って初めて、細胞そのものを修復する再生医療なども効果が期待できるのではないかと考えられています。
① MSC(間葉系幹細胞:脂肪・骨髄など) 作用:抗炎症・組織修復・免疫調整
MSCは「幹細胞」という名前から“新しい細胞に置き換える”イメージを持たれがちですが…
パラクリン作用(周囲の細胞に信号を出す作用) によって、組織の回復を「助ける司令塔」として働きます。
Ⅰ.炎症を静める
Ⅱ.組織修復を促す因子(成長因子・サイトカイン)を放出
Ⅲ.免疫の暴走を整える
② エクソソーム(細胞の“若返り信号”を運ぶ小さなメッセンジャー) 作用:細胞間の情報伝達/遺伝子スイッチの調整
エクソソームは、幹細胞から放出される極小のカプセルの中に、マイクロRNA(miRNA)やタンパク質が入り、これが細胞に「どう動くべきか」を知らせる信号になります。
Ⅰ.損傷した細胞に修復シグナルを送る
Ⅱ.ミトコンドリア機能をサポート
Ⅲ.炎症性遺伝子のスイッチをOFFにする
特に、若い幹細胞由来のエクソソームの方が細胞環境を若い時のようにする働きを持つのではないかと考えられています。
③ペプチド療法(Epitalon、Thymosin β4 など) 作用:老化経路の微調整・修復促進
ペプチド療法は昔から存在する治療が“長寿医学とともに再注目を浴びているような領域です。
● Epitalon(エピタロン)
テロメア維持やメラトニンの調整が報告されており、生体リズムと細胞寿命の調整に関わる。
● Thymosin β4(TB-4)
胸腺関連ペプチドで、組織修復、炎症の沈静化、血管新生のサポートなどの研究報告がある。
ペプチドは、再生医療の 「微調整・補助パーツ」 のような立ち位置で、環境が整った後の細胞修復を後押しします。
④ミトコンドリア移植(細胞エネルギーの再起動):細胞エネルギーの再構築/疲弊細胞の復活などの取り組みも始まっています。
CRISPR遺伝子編集:細胞を直接再プログラムする技術
老化遺伝子や修復遺伝子を直接編集する技術で、現在は研究段階ですが長寿医学の最終フェーズとして注目されています。

老化を遅くする → 老化を巻き戻す → 環境を整える → 組織を再生する
ことによって、老化は制御可能になるというのが最新の結論となっています。
当院においても引き続き、最新の科学に基づきながら、より効果的で安全な“未来医療の入り口”を皆さまと共有していきたいと思います。
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